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☆偶数月第一土曜に語り合いの会をもっています☆


by あ~あ

異文化間教育学会第34回大会個人発表6月8日(土)    

1)
アスペルガーを配偶者にもつ人のおかれている状況
~定型と非定型という異文化からみえてくるもの~


2)
異文化間教育の中で
★文化多元主義:
女性や障がい者も‘多文化’に含まれる
★(アメリカ)多文化教育の実践
リハビリテーション法(1973)
全障がい者教育法(1975)

アメリカでは、黒人による公民権運動の流れで、他の少数派である民族運動につながった。その流れは女性や障がい者の権利獲得にまでつながる。それは、それまでのアメリカのメインストリーム(=WASP中心社会)への同化政策からの脱却である。
実践としては障がい者に対する雇用機会や環境整備、公教育による各人の特性に合わせた教育の保障に関する法律も成立。


3)
★カサンドラ愛情剥奪症候群の症状が出ている人の視点


4)
アスペルガー(非定型)
⇒自閉症スペクトラムの中、アスペルガーは長年、その特徴を生かした教育の対象から見落とされてきた
≒現在、早期では乳児健診で発見されることも
=より適切な教育(療育など)を受ける機会が得られる
⇒(年齢的に)結婚しているアスペルガーは・・・
見落とされているケースが多く、大人のアスペルガーへの対応も行政によりばらつきがある。診断を下す医療機関にもばらつきがある。


5)
アスペルガー(以降AS)とは
★三つ組の障がい
①想像力と創造性の障がい
②社会的関係をもつことの障がい
③コミュニケーションの障がい
ASは男性に多い(男女比は8対1)
学歴をつけ、仕事をしていることも多い
しかし、特性にあった適切な教育などを受ける機会がなかったこともあり、ASの特徴からくるものだけでなく、様々なトラブル(ASの特徴を原因とした二次障がいなど)をかかえる

ASにとっては、定型配偶者だけでなく、社会全体が異文化
定型にとっては、自文化の中で異文化のAS配偶者(家庭内が異文化がせめぎ合っている)


6)
男性ASと結婚した定型女性
配偶者のほとんどが女性である事実
=ジェンダー役割が入り込む=良い嫁・良い妻・良い母=夫のお世話して当然、夫の愚痴を言うと世間からバッシングを受ける

恋愛では、個性的!と感じる程度
結婚そのものでも、社会的な関係が表面化すると、定型が理解できない行動がみられる
子どもを持つことで、父親としての役割が果たせない

↑すべてのASがこのような状態ではありません。個人により症状の出方も異なります。
 

7)
男性ASと結婚した定型女性2
=ASを配偶者にもつ女性は嫁・妻・母役割を果たした上、AS夫が本来すべきこともし、その上、AS夫をお世話する必要
AS夫に心無い言葉を浴びせられる、暴力を受けることもある(=三つ組の障がいにあてはまる行為による)
その対象は妻だけではなく子どもにも向かうことも
=DVの被害者になりうる定型の配偶者・子ども
⇒しかし、その実態を話しても、信じてもらえることが少ない:「男ってどこもそうだから」、「優しそうなご主人なのに、そんなことを言うのはわがままよ」
前段階として、「良い嫁は夫の悪口を外で言わない」というジェンダー役割に縛られ、発言すらできないケースも多い 
良い嫁は夫のお世話をして当然とのジェンダー役割に支配された思考から、現状に気づきにくい


8)
カサンドラ愛情剥奪症候群1
「ASの人たちはパートナーから(たいていは意図せずに)感情的な剥奪を行い、その影響はパートナーの心身の健康に及ぶ。特にカップルでは問題の原因(=AS)がわかっていない場合、その被害は大きくなる。」
(Aston,2008)


9)
カサンドラ愛情剥奪症候群2
主な症状
・偏頭痛、体重の増加または減少
・低い自己評価、または自己の損失
・広場恐怖などの恐怖症
・不安
・抑うつ、無気力感
・リビドーの損失


10)
カサンドラとは
ギリシア神話の登場人物。アポローンは、「カサンドラの予言をだれも信じないように」呪いをかけてしまう。
パリスがヘレネーをさらってきたときも、トロイアの木馬をイリオス市民が市内に運びこもうとしたときも、これらが破壊につながることを予言して抗議したが、だれも信じなかった。・・・
⇒「カサンドラの予言をだれも信じないように」・・・

「だれも」とは誰?=自分の身内や各種相談機関


11)
“Having a voice.”
★Aston博士のASを配偶者にもつ女性に対する言葉
⇒自助グループ、にじいろに参加
ここでは本名以外で呼び合い、普段の困り感を語り合っている
気づきと共感があり、普段理解されないことが理解される。
=三つ組の障がいの特徴にたどり着くエピソード
→少なくとも自分は悪くないと確認できる

12)
問題点
★少数派であるASと、より少数派である健康問題であるカサンドラ愛情剥奪症候群
仕事ができているASは医学的に問題なしとみなされることもある
カサンドラ愛情剥奪症候群は配偶者のASとの診断が前提であること、症状そのものがほかの診断名がつくことも多い
ASの家族としてASの配偶者は援助の対象者ではない
=ASの家族は親であると見なされている
=ボーダーである立場、援助はASが低年齢であるほど手厚い
★この中の少数
国際結婚(一般的な社会より多い印象:1割程度)
女性ASの配偶者である男性定型
AS同士のカップル
★密室の中での個人の営みであることから、不可視性と援助が入ることの問題
:DVの問題と重なる
★一見誤解を受ける関係:
ジェンダー役割にうまくはまる場合があるAS夫。
単に良い嫁としてだけでなく、それ以上のフォローを要求される状況である定型妻であるが、カサンドラのような状況にある。


12)-2
問題点
他の異文化の問題と同様に
★より少数のマイノリティが苦境
=理解されない、発言できない、想いが反映されない
★公的な支援=まず、法的に:家族に配偶者や子どもを含むように
★定型・非定型、両者への教育(療育や障がい者理解など)
★ジェンダー役割を盲目的に実行してしまうことによる不利益
★ジェンダー役割が蔓延している社会(男性の育児・女性の就労に困難を伴う社会構造)


13)
提案
★対・AS
⇒早期発見の必要
⇒発見したら適切な教育などの提供の必要
⇒コミュニケーションエラーの原因の一つとして、ASを疑ってみてもいいのでは?例)いじめや登校拒否
★対・カサンドラ愛情剥奪症候群
⇒まずは、専門家にご理解いただきたい
⇒カサンドラ愛情剥奪症候群への何らかの援助が必要
⇒エンパワメントへ
(個人レベル→他者関係レベル→社会関係レベル)


14)
参考図書・URL
★自閉症スペクトラム学会編(2012)
『自閉症スペクトラム辞典』教育出版
★松尾知昭著(2013)
『多文化教育がわかる事典―ありのままに生きられる社会をめざして―』明石書店
★山田礼子(2009)
「多文化共生社会をめざしてー異文化間教育の政策課題ー」、『異文化間教育30号』異文化間教育学会
★にじいろ 
http://aaaruicchi.exblog.jp/
★Aston氏のHP
http://www.maxineaston.co.uk/


15)
ご清聴ありがとうございました




by aaa-ruicchi | 2013-06-09 11:16 | こんな会あります③学会発表など